横溝正史シリーズⅡ「真珠郎」

ドラマ

2022-01-13

1978年に放送された「横溝正史シリーズⅡ」から「真珠郎」。古谷一行が金田一耕助のシリーズだが、その中でもこれはとてもおもしろかった。

しかし第一回はかなりおどろおどろしい。怪奇色と神秘色が強くて、一体どういう話なのかよくわからない。推理ではなく怪奇ものかと思ってしまうほどだが、第二回、最終回と見ていくにつれて、やはり本格推理なのだとわかってくる。

image

早川絵美さん演ずる真珠郎。美人ですねえ。この妖しい雰囲気。これが作品の雰囲気を決めている。この独特の神秘的な演出がすばらしい。

しかしこの「春興楼」という屋敷、「犬神家の一族」でも使っていたのではないかという声も…ここも不気味で異様な雰囲気にしてある。

image

あまりにも訳の分からない事件でさすがに困惑する金田一耕助。この作品を書いた頃の横溝正史の耽美趣味、怪奇趣味がかなりどぎつくて、「八つ墓村」なんかとはだいぶ趣が違いますね。

image

真珠郎の秘密を語る音蔵に名優・藤原釜足を起用している。「なんと恐ろしいことでしょう」とボツボツと語るのがかえって余計に怖い。

image

クレジットが出ていないが、ナレーションの声もすごくいい。「真珠郎は、どこへ行ったのか…!」というような力強いナレーションがこの映像の怖さを盛り上げている。音楽も作品の雰囲気にピッタリですね。このねっとりしたような陰鬱な旋律が。

由美と乙骨三四郎と椎名。この三人を中心にストーリーが展開するが、乙骨役の中山さんの端正な顔立ちにまたビックリしてしまう。この頃ウルトラマン80の隊長役もしておられましたが。

image

変態男の鵜藤。こいつがまたとんでもない男で、真珠郎のある意味生みの親。しかし「アポロンのような容姿を持ち、バチルスのような心を持った男をつくり上げて、あなちに復讐してやる!」とかいうセリフが何とも、戦前というか昭和初期のレトロな雰囲気。演ずる岡田英次さんは天知茂の明智小五郎シリーズでも似たような役をよくやっておられます。

image

おなじみの金田一と日和警部。原作は金田一ではなく由利麟太郎だが、特に問題はないという感じ。他にもやはり名優の加藤嘉が金田一の遠縁の和尚・了潤の役で出てきたりするが、この了潤和尚も飄々として何とも味がある。

image

ラストのトリックの種明かしは「なるほど~」とうなってしまうが、花を敷き詰めたボートをわざわざ用意しとくというのはどうなんでしょうか。この女ど厚かましい!とも思ってしまうが。