ホーク・ラボ|横溝正史シリーズⅡ「黒猫亭事件」

横溝正史シリーズⅡ「黒猫亭事件」

ドラマ

2022-01-15

1978年の横溝正史シリーズⅡ「黒猫亭事件」から。古谷一行版の金田一耕助。ゲスト出演は太地喜和子、近藤洋介ら。

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これもよくできたドラマだった。「顔のない死体」のトリックに挑んだ横溝正史の意欲作だが、それを見事にドラマ化していると思う。特に配役がすばらしい。ほとんど配役の勝利という感じがする。脇役に至るまでピッタリという配役。

事件はバー「黒猫亭」が引っ越した後、その敷地の庭を裏の寺の僧・日兆が掘り起こし、全裸の女の死体を発見したことから始まる。居合わせた長谷川巡査も仰天してただちに捜査本部が設置。被害者は黒猫亭のマダム・お繁と推測され、お繁の愛人だった風間の依頼で、金田一耕助も捜査に乗り出すが…というストーリー。

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この日兆役の池田秀一さんがまたピッタリ。「獄門島」の寺の小僧さんとほとんど同じ格好だが、この作品では事件の重要人物。長谷川巡査役の多賀勝さんもいい味を出している。

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この日兆の証言があいまいでしかも二転三転し、捜査は難航。死体もいったい誰なのか、候補としてお繁・桑野鮎子・小野千代子の三人の女性が挙がるが、どれも決め手に欠ける。ここでも金田一は頭を抱えてしまう。

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お繁は行方不明なので金田一とお繁の接点はほとんどなく、お繁の人物像は風間を通じて語られる。このお繁役も太地喜和子さんが見事にはまっている。複雑で謎の女性・お繁のキャラクターがこの事件の鍵になっているが、これも太地さんだからこそという感じがする。

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この風間役の近藤洋介さんがまためっちゃカッコいい。土建屋のやり手の社長で気前が良く、面倒見もいい。しかし女に関してはドライなところもあり、「俺が女に惚れるか。向こうが勝手に惚れるんだ。俺の金目当てにな」と言ったりもする。これも近藤さんが言うから嫌味がないんでしょうね。このドラマ、何だか近藤さんの方が主役という感じがする。

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事件後、しんみりと話す金田一と風間。原作はだいぶ前に読んだのであまり憶えていないけど、こういうシーンはなかったような…結末も原作とドラマでは少し違いますね。

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昭和22年の設定だが、当時の東京の様子をよく再現している。同じシリーズの「三つ首塔」でも凝ったセットにして演出も細かかったですね。当時のドラマの監督さんはじめスタッフの方々は、皆さん手を抜かなかったんだなあと感心しきり。出演者も当時の時代劇やなんかでよく見た方々で、手慣れた演技だと思う。

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こういうドラマは結末がわかっても、何度見てもおもろしい。やっぱり細かいところまできっちり作ったものというのは、見るたびに新たな発見があるものだと思う。今はこういうドラマもないですねえ。