J.D.カー『蝋人形館の殺人』

2022-01-22

う~ん、これはどうかな。ジョン・ディクスン・カーのアンリ・バンコランものだが、バンコランがまた気障で上から目線で嫌な野郎だし、何よりトリックがひどい。あんな欠片で、「こいつが犯人」て言いすぎでしょう、あなた。と思ってしまう。後は犯人の告白のみで、それだったら究極誰が犯人でもいいやん。

文章も相変わらずギチギチに文字が詰め込んであって、読みにくいこと極まりない。唯一おもしろかったのが語り手のマールが秘密クラブ?に潜入捜査するところで、ここは文章も砕けていて読みやすいし、大太刀回りがなかなか痛快で楽しめる。

まあ、おもしろいと思う人がいるから今でも翻訳が読めるのだろうけど、1932年というこの時代の怪奇趣味というのか装飾過多というのか、こういうくどくて着飾った文体の小説がやたら受けた時代だったのかな。

横溝正史はカーに傾倒したというけど、カーは1906年生まれで、横溝は1902年生まれだから横溝の方が年上だと気付いてちょっと驚いた。おどろおどろしい雰囲気は確かにちょっと似てますが(由利麟太郎ものとか)。でもトリックとかプロットの作り方はかなり別物という気もしますね。