横溝正史シリーズⅡ「仮面劇場」
ドラマ
2022-02-26
古谷一行の金田一耕助シリーズから１９７８年制作。しかしこれはどうなんでしょうか…もうグッチャグチャという感じのドラマになってますね。
原作自体がかなり複雑というせいもあるのだろうけど、被害者の数も原作より増えていて、収拾がつかないほど殺人事件が起こる。他のサイトでもいろいろ紹介してあるけど、概して評価は高くないみたい。
細かなストーリーを追っていると大変ですが、個人的におもしろかったのが大道寺珠代役の新村礼子さん。名門・大道寺家の出戻りの義妹なのだが、貴族面をして兄嫁の大道寺綾子をいびりまくる。
とはいえ綾子（司葉子）も勝手な女で、夫が死んだあとは大道寺家の当主に収まってやりたい放題。得体のしれない美少年・虹之助を大道寺家に引っ張り込んだり、金田一を連れてきたり、夜中に家を抜け出して志賀恭三（池辺良）とイチャイチャしたりしてるのだから、義妹の主張にも一理ある。
綾子役の司葉子さん。そういう役柄というのもあるのだろうけど、顔がきれいな割にはセリフが白々しくて、あまり好感が持てないなと。ですので、顔に膏薬を貼って憤激する珠代さんについつい同情してしまいますね。
大道寺家に乗り込んできた警察関係者たちを前に、「大道寺家は警視総監をお迎えしたことはあっても、あなたたちのような下っ端の警官を入れたことはないんですのよ！ 汚らわしい！ 出てって！」と毒づき、ワーッと泣き出して二階へ逃げ込む。「なんじゃありゃ…」と、金田一と警察一同、皆唖然。「ちょっとおかしいんですよ…」と金田一が説明するのだが、こうなったのも元はと言えば綾子が虹之助なんかを連れてくるからで、私なぞは断然珠代さんの方が正義だと思ってしまいます。
新村さんは「仮面舞踏会」で出演していた内田稔さんの奥さんだそうで、ご夫婦でこのシリーズでもなかなかいい役をしておられる。演技はお二人とも本当に上手ですね。それに比べれば司葉子なんて…と思います。顔は美人ですけど。
さてこの「仮面劇場」、話としてはどうなんでしょう、志賀恭三の妹の琴絵の主治医だという鈴木医師（下条正巳）に事情を聞きに行くと、琴絵は虹之助と瓜二つで、お定まりの双子の設定かと思いきや、そうではなくて兄妹とか。「真珠郎」でもそうだったけど、腹違いの兄妹がこんなにそっくりになりますかねえ…まだ双子という方がいいような。あるいは虹之介の二重人格とか。推理としても戦前の由利麟太郎ものは今一つ練れてないという感じがする。
ラストもどうなんでしょうか。たくさんの人が殺されたのに、綾子と恭三はついに結ばれてハッピー(｡･ω･｡)ﾉ♡かいよ。やっぱり珠代さんはお気の毒だったなあと思います。大道寺家の莫大な遺産は綾子の独り占めとなり、巻き込まれた甲野家の兄妹や大道寺家の使用人たちはとんだ面の皮でしたね。
というドラマでしたが、横溝ファンとしてはやはり気になるのが「大道寺」という家名。『女王蜂』でおなじみの家名だけど、割と横溝は同じ名前や名字を別の作品でも使う傾向がある。いちいち別の名前を考えるのがめんどくさいというのもあるでしょうしね。
「鵜藤」は「真珠郎」でも出てくるし、「珠代」の「珠」も割と好きだったようで、「夜の黒豹」でもそこから等々力警部があれこれ推理したりするが、横溝正史はほかに「琴」も好きですね。琴にしても珠にしてもとても美的な感じで、横溝の耽美主義がここでもよく表れていると思う。