横溝正史シリーズⅡ「女王蜂」

ドラマ

2022-02-24

古谷一行の横溝正史シリーズから「女王蜂」。大道寺智子役は片平なぎさ。他に神山茂、岡田茉莉子、夏夕介、赤塚真人、川合伸旺など。1978年放映。

配役はまあまあいいのかな~ですし、ストーリーも割と原作に忠実ですが、テンポがあまりよくない。第一回はなかなか事件が起こらず、ちょっとダレますね。

それに日下部達哉の正体が結局明らかにはならないので、ドラマのおもしろさが半減している。実は智子は…という展開にならないのが残念ですね。

夏夕介の多門連太郎もいいのだけど、それがあっさり毒殺されるというのはなんなのか。遊佐もなぜか大道寺家の下働きで、智子に一方的に恋して時計台で殴り殺されるというみじめな役。姫野東作もなんだか気色の悪い老人で、被害者役の演出は総じてマズかったと思う。

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しかし智子役の片平なぎさはピッタリはまってるかな。いかにも美人という感じで、おまけに明るくて親切なので華がある。まわりの男たちは智子に夢中になってしまって、互いにいさかいを起こす始末。こういうシーンは映画版にはあまりありませんでしたね。せいぜいテニスコートで喧嘩したことぐらいで。

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このドラマ版ではあくまで主役は大道寺智子で、徹底的に中心に描かれている。顔のアップも多いし、智子を軸に話が展開する。こういうところは原作通りで、違和感がない。「女王蜂」というタイトルにふさわしいと思う。しかし原作では智子はもっと派手な格好をして、派手な舞台で人目を引いていたけど、ドラマ版では舞台が月琴島に限られているので、そういう華やかなシーンは少なかった。

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訳が分からない役だったのが川合伸旺演じる九十九竜馬で、月琴島の怪しげな祈祷師だが、話の途中までは割といい人っぽいので「あれ?」と思う。しかし最後は智子を手籠めにしようとするので、やっぱり川合さんの役だなあと思ってある意味安心する。

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速水欣造役の神山茂さんはいかにも欣造氏という雰囲気で、映画版の仲代達矢さんはちょっとエキセントリックなので、神山さんの方が原作通りという感じがする。温厚で礼儀正しい実業家だが、実はとんでもない変態で…という役どころ。最後に顔の表情が一変するのもさすが神山さんで、ジキルとハイドみたいな役を上手にこなしておられましたね。

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しかし速水欣造が加納弁護士に頼んで金田一耕助を連れてくるというのはいかにも不自然で、智子に群がる男たちを皆殺しにしてやろうという動機と整合しない。衝動的な殺人ということにしたかったのかしれないが、だとしてもその演出がぼやけてますね。概してこのシリーズ、推理としての論理の整合性には無頓着ですが。

そして物語のラスト、智子は月琴島に…という結末だが、ドラマ版も映画版と同じく、原作とは違う終わり方にしている。原作の結末はあまりにも安易に思えたのでしょうか。

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全体としてみるとどちらかと言うと残念な出来なのだけれど、映画版とは違ったおもしろさはあります。最大のポイントは智子役を誰がするかで、その点では成功でしたね。またドラマ化してもおもしろい作品だと思いますが。