横溝正史シリーズⅠ「犬神家の一族」

ドラマ

2022-03-01

横溝正史シリーズの第1弾。1977年の放映で、古谷一行が初めて金田一耕助を演じたドラマでもある。その前年に映画『犬神家の一族』が大ヒットしたが、そのドラマ版ということになる。

そもそもこの横溝正史シリーズ、横溝ブームを受けて企画されたテレビドラマだが、映画『犬神』と同じく角川春樹事務所が制作に加わっているが、毎日放送・大映京都・映像京都との共同制作になっている。

そのためかロケ地には関西地方が多かったようで、シリーズⅠのエンディング(『犬神』と『本陣殺人事件』)の山と海は琵琶湖岸ではないかという気がする。守山市の赤野井湾から見た景色がそれで、たぶんまちがいないでしょう。シリーズⅡのエンディングは京都の龍谷大学旧校舎ですね。

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この那須ホテルも琵琶湖岸のどこかでしょう。

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この背景は京都市美術館(現在は京都市・京セラ美術館)。他にも京都の近代建築を使っている。

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横溝正史シリーズは人気シリーズとなり、名作・力作が多いけど、中には今から見ると「?」と思うようなのもある。このドラマ版「犬神家の一族」は最高視聴率が40パーセントを越えたというのだが、どうなんでしょうか…

〈ネタバレあり〉

当主の犬神佐兵衛(岡田英次)が死にかけているのに、財産目録を読み上げる古舘弁護士と聞き入る犬神家の一族。なんだかこういう不自然なシーンが多かった。

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京マチ子、月丘夢路、小山明子という当時の大物ベテラン女優たち。映画版に対抗したキャスティングという気がする。

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手形を押す押さないでもめるシーンですが、板敷きの床があまりきれいでない。襖の絵も何だか毒々しい。

犬神家の屋敷内のシーンは、なぜか畳のない部屋が多くて、全体に寒々しい印象。どこかのお寺を借りて撮影してるんじゃないかと。ここらへんは映画に見劣りしてしまう。映画の犬神家は大名屋敷のような豪華さだったけど。

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野々村珠代役の四季乃花恵さん。宝塚のご出身だそうですが、私はほとんど見たことがない女優さんですね。どうしても映画の島田陽子さんと比べてしまいますが…

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全体を通して犬神松子(京マチ子)の酷薄さが目立った。青沼静馬の母親の写真を燃やしたり、犯人と割れてから妹たちに「許してくださいね」と無感動に頭を下げたりで、一方で佐清に対する母親としての情愛とかは感じられなかった。

妹たちも息子を殺されたのに「こんな家に住んでられませんわ!」とだけ言っていずこかへ去っていく。私だったら犯人に飛び掛かってやるけど。その点も映画版の方がリアルだった。

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金田一耕助の逆立ちシーン。逆立ちは古谷一行の特技で、これで映画版の石坂浩二と差別化をはかったらしいのだが、ルパン三世partⅡに出てくる「金田二耕助」も下宿で逆立ちをしているので、これも古谷一行の影響かと。

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古舘弁護士(西村晃)。ものすごくけち臭い設定で、それはそれでおもしろいという気もするけど、金田一にしても古舘弁護士にしても、映画版よりもっと親しみを持たせようという演出なんだろうか。

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佐清役の田村亮さん。本当にきれいな顔の俳優さんで、「虫も殺せない佐清」という感じでした。配役は全体によかったと思うけど、妙に映画版を意識したような演出がかえって安っぽくて、私はどうもいちいち気に入りませんでした。

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映画版があまりに有名で名作とされているので、テレビドラマ版は変に気合が入ってしまって、不自然な演出が多かったように思う。映画と比べなければそれなりによくできたドラマだと思うのですが。