春陽堂はなぜ横溝正史の文庫を出さないのか

ひとりごと

2022-05-29

タイトル通りです。なぜなんでしょう?

春陽堂は、人形佐七捕物帳は豪華本で出しているのだが、高すぎて、よほどのファンでなければ手が出ない。金田一ものやその他の傑作推理も出してほしいのだが。それも文庫版で。

春陽文庫の横溝作品は、表紙もいいのが多いんだけどな。角川文庫の杉本一文氏の絵とはまた違った良さがあって、こっちの方が現代的で硬質なセンスがあふれている。この「金田一耕助の冒険」は、長髪・黒服のSМ嬢みたいな女の表紙なんか、90年代を思わせる。光文社のカッパノベルスとか講談社ノベルスとも似ているような、ハードボイルド系の表紙ですね。



タイトルのフォントでもカッキリとしたゴシック体に中抜きした赤色で、これに比べると角川文庫版の装丁なぞは、おどろおどろしさはあるけれど、もっとロマン的で柔らかいデザインだと思う。

これまた由井正雪みたいな一柳賢藏?の「本陣殺人事件」。これも赤で中抜きしたゴシック体フォントで、作品の激しさ、怖さを強調したような表紙になっている。なんだか西村京太郎のトラベルミステリーみたいなデザイン。



これもいいなあ…と思うのだが。「死仮面」だが、これなぞはプレミアがついてものすごい値段になっている。行方不明だった連載第4回が収録されているせいだろうが。同じフォントで、陰影のクッキリした女の顔が印象的。炎の中のデスマスクが青白く光って、これも硬質な感じがする。



春陽堂は角川書店より横溝正史との付き合いが長くて、戦前からある由緒正しい出版社なのだそうだが、元々は美術系の本を出版していた会社で、そのせいか表紙のデザインや装丁も優れたものが多い。

春陽文庫のデザイナーは誰なのか。寡聞にして知らないが、このシャープな絵柄と現代的なデザインは、横溝作品でなくても価値があると思う。春陽堂が横溝作品を同じ装丁でまた出してくれたら、喜んで買いますけどね。