大鉄人17 第33話「ニヤリ!タイガー地獄の微笑」

ドラマ

2024-01-02

石ノ森章太郎原作のロボット特撮番組「大鉄人17」から第33話「ニヤリ! タイガー地獄の微笑」。1977年10月28日放映。

最近昭和のドラマとか音楽にはまってますが、さすがにこれは私も見たのは子どもの頃の再放送。昔はKBS京都とかでよくこういう再放送やってたんですよね~

ストーリーは他のサイトでもいろいろ紹介されてますが、地球環境を守るためにつくられた巨大コンピューター「ブレイン」が反乱を起こし、逆に人類を滅ぼそうとするもの。ある意味よくあるコンピューター反乱もので、SFでは定番のストーリー。「2001年宇宙の旅」のHAL9000とか「デモン・シード」のプロテウス4とか、ともかく人間はコンピューターというやつにえたいの知れぬ恐怖を抱くものらしい。

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まるで植木鉢の鉢植えの樹みたいなブレイン。しょっちゅう自分で自分の回路をくっつけたり離したりしている。

「大鉄人17」のおもしろいところは、このブレインが「超生産能力」を持っていることで、ブレインは巨大工場みたいにそれこそ「スプーン1本から宇宙船まで」ありとあらゆる産業品を瞬時につくり出すことができる。私らの子供の頃は三菱重工業が「鉛筆1本から戦闘機まで」何でも作ってるのだと揶揄されてましたが、このブレインの「超生産能力」というのは産業立国日本の比喩なんでしょうね。

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自然環境を守るためには人類を滅ぼすべき、と結論したブレインは、自分と同じ超生産能力を持つ巨大ロボット・17(ワンセブン)をつくり、人類攻撃を命令するが、17は「人類は地球環境を守ることもしている」とブレインに反論し、人類の味方になってしまう。そして三郎(神谷政浩)という少年とともに国際平和組織・レッドマフラー隊に助勢するのだが、何でも言うことを聞いてくれるわけではなく、あくまで自分の意志や考えで行動する。こういう複雑なところが何とも子供向け番組とは言いながらなかなか硬派な設定で、中学生ぐらいで見るのが一番おもしろいような作品でした。

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33話はもうシリーズの終わりの方で、ブラック・タイガー(山本麟一)がブレインのライバルコンピューター・ビッグエンゼルを破壊しようとする回。完全防御能力を持つビッグエンゼルは、ブラックタイガーの細胞を破壊し、消滅させてしまう。こういう「完全防御能力」とか「超生産能力」とか、石ノ森さんの発想なんでしょうけど、SF的な概念の設定が実にうまいと思います。

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山本麟一とくれば時代劇ファンにはおなじみ。「江戸を斬る」には各シーズンに毎回1回は出てたような気がする。濃い悪役ばっかりの人でしたが、とにかくド迫力の演技。ご本人はきっと仕事熱心の真面目な人だったと思いますね。

それとまた濃い濃い演技なのがハスラー教授役の大月ウルフ。フジ子・ヘミングの弟だそうですが、だいたいどの役でものぼせあがった演技でした。

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ブレインの配下の軍事組織・ブレイン党。どうみてもナチス・ドイツがモデルで、今ならコードに引っかかって地上波の放送はできないかな。

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ブラック・タイガーがビッグエンゼルに消滅させられたのを見て驚く三郎と佐原博士(中丸忠雄)、剣持隊長(原口剛)。

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レッドマフラー隊の司令官は科学者の佐原博士で、こういう設定はガッチャマンなんかと似てるような。現実の日本の科学者は司令官どころか予算を政府に握られてみじめな存在ですが。中丸さん演じる佐原博士にはあこがれました。

とにかくカッコいいのが剣持を演じる原口剛さん。時代劇ではほとんど悪役でしたが、じかに会えばメチャクチャハンサムだったんでしょうね。厳しいけど誠実で頼りになる、すぐれた隊長役を好演しておられました。

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ついにブラック・タイガーは死に、ブレインも17も、三郎たちも決戦の時が来たことを悟る。さて次回はどうなるのか?なんて終わり方。シリーズ前半は子供向けとは思えないシリアス展開で、見るのに疲れた思い出があります。

シリアス過ぎて視聴率が下がってしまい、中盤以降はコミカル路線に変えてしまう。それでつまらなくなって、見なくなった。それから私も大人になって、今改めて見てるわけですが、SFとしての設定や発想はやはりすぐれていると思いますね。

大鉄人17 VOL.3<完> [DVD]