私鉄沿線97分署 第3話「今川焼でタッチダウン!」

私鉄沿線97分署

2024-03-23

1984年11月11日放送。監督は手銭弘喜、脚本は渡辺千明。出演は立枝歩、山田吾一、浅見美那。

東和銀行田園プラザ支店で強盗事件が発生。零細企業の従業員・小宮幸子(立枝歩)が従業員たちの給料を下ろした直後、強盗に殴られて金を奪われたというのだが… 真相は割合すぐにわかりますね。

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「東和銀行」といういかにもフィクションにありがちな銀行の名前。「プロジェクトA子」の初期設定時の大徳寺美子の名前が「東和美子」だったので、よけいにそう思ってしまう。

こんな名前の銀行なんてないだろう、と思ってネットで調べてみたら、なんと実在するんですね。1989年に大生相互銀行が東和銀行に名前を変えたそうで、この回の放映時にはやはり存在していなかった。ただそれだけの話なのだが、「東和」というのは何となくいいネーミングではあります。

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今回のヒロイン役の立枝歩さん。芯の強い、しかし可憐な女性の役で、この回の悲劇性を高めるいい演技でした。今も女優としてご活躍だとか。

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奈良刑事が幸子を問い詰めるシーン。鷺沼駅の沿線のビルの屋上ではないか?

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よく見ると、奈良の背後に「鷺沼パレス」の看板がチラッと映っている。

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たぶん鷺沼駅の北口のマンションか何かの建物の屋上で撮影してたんでしょうが、今は建て替わっているようで、それらしい建物はないですね。この当時からして結構古い感じのビルだし。

看護婦さん(昔は「看護師」なんて言い方はありませんでした)がまだナースキャップをかぶってる。衛生的には意味がないとかでかぶらなくなりましたが、それ以上にイスラムのブルカみたいに女だけに被り物をさせるのが問題視されたんでしょうか。

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田川社長役の山田吾一さん。だいたい悪役の多い人ですが、「白い巨塔」の亀山雄吉なんかは、一見頑固で分からず屋だけど、実は善良で骨のある人物。そういう奥行きのある役を演じる人でした。「シャーロック・ホームズの冒険」の「青い紅玉」の回のピータースンの吹き替えもコミカルでなかなかおもしろかったですね。

この回で見ていて最も興味深かったのが、幸子の同僚・ヨシ子を演じた浅見美那さん。

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飾り気のない、こなれた演技で、幸子のアパートに入院用の着替えをとりに行ったシーンでの片山(時任三郎)とのやり取りはなかなかおもしろかった。

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それが次に片山が会いに行くとコロッと変わって、会社を辞めてキャバクラ嬢に転身していた。見ていて子ども心に「ドッヘーッ!」と思ったものでしたが。当時はロマンポルノにも出演してたそうで、そのせいか妙に色っぽい演出が多かったような。

「あの子は、父親が早く死んで、可哀そうだったんだー」と片山にサラッと言う。この幸子の身の上が事件を解く鍵となる。こういうところも上手でしたね。その後引退されたそうですが、与えられた役をきちんとこなしているという感じでした。

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幸子の死体が見つかり、マスコミに攻撃されて意気消沈する奈良。榊検視官が奈良を支えるのだが、ここも鷺沼駅の線路沿いの坂道かと。「土橋」という町名が電信柱に見える。

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今回は今川焼が滝村課長(長門裕之)の大好物という設定。ストーリーとは何の関係もないエピソードなのだが、悲しい話を和らげる意味があったのかなと。昭和のドラマにはだいたいどこか「悲しさ」がありましたね。

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