カラヤン&パリ管 ベルリオーズ「幻想交響曲」
音楽
2025-01-04
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮パリ管弦楽団。1970年パリでの収録。実験的なショットが満載で、60年代のまだ試行錯誤的な雰囲気が残っている。
やたらとカラヤンの顔をアップにするのはカラヤンの映像作品では「当然」のことなのだけど、それにしても楽団員の顔はほとんど映ってない。せいぜいぼやけて映すか遠くから映すだけで、この当時の指揮者と楽団の力関係が表れている。
いきなりカラヤンのドアップ。ベートーヴェンの英雄でも同じ演出をしている。映像監督はいたけど、実質はカラヤンの手足に過ぎなかったんでしょう。
オーケストラの職人技を見せようというのか。とにかくアップの映像が多い。スタジオ録音で背景はモノカラー。コンサートの実況という発想はなく、あくまで「映画」という位置付け。
コンサート風の映像でも実際には何日かかけて別撮りしたものを編集しているのだが、この幻想交響曲でははっきり別撮り編集がわかる。あれこれ試してみようという前衛的な気概が感じられるのだけど、今から見るとやっぱり変ですねえ…
なんで青いライトを当てるんでしょうか…? いまいち意図がわからない。
なぜかバルビローリとハレ管弦楽団の映像もおまけでついてくる。こういうアバウトさがいかにもフランス的。
瞑想しながら力強く腕を振り下ろすカラヤン。これがアンチと崇拝者の両方を生み出していたわけですが… この当時のカラヤンはパリ管弦楽団の監督も兼ねていた。本人はかなり嫌がったそうですが、パリ管がどうしてもと懇願したとか。
世間では学生紛争が吹き荒れ、ゴーゴーだのモンキーだのサイケなことをやってた頃ですが、クラシックにもそういう異次元的な雰囲気があったのだとわかる。あとはカラヤンの華麗な指揮ぶりとパリ管の美しい演奏を楽しもうという映像。そう割り切って見ると楽しめます。